バリューリーダーシップという新しいリーダーの在り方

企業に属して働く上で、「仲間と共に仕事を頑張り、成長し、昇給や昇格をし、幸せを増やしていきたい」と考える方は少なくないと思います。それを手にするためには部下・後輩ができることや昇格することが必要ですので、リーダーシップについて書籍や研修で学んでいくことになります。
しかしこの“リーダーシップ”というものは、時代・環境・当人の性格・部下の人数・権限の範囲等によって様々なスタイルがあり、自分がどのスタイルのリーダーシップを発揮するべきなのか?を明確に分かっている方は少ないのではないでしょうか。

そこで本コラムでは、弊社がおすすめする『バリューリーダーシップ』について紹介します。
リーダーシップを発揮していく上での参考になれば幸いです。

論者の数だけ存在するリーダーシップのスタイルや要素

リーダーシップのスタイルについて研究している学者は数多く、論者の数だけ理論や考え方が存在していると言われています。以下に代表的なものを挙げました。

【図】リーダーシップのスタイル

また、一口に”リーダーシップ”と言っても、以下のような多くの要素が必要とされます。

・自主性
・協調性
・柔軟性
・受容性
・先見性
・カリスマ性
・コミュニケーション能力
・統率力
・決断力

・行動力
・影響力
・共感力
・発言力
・育成力
・指導力
・適応力
・応用力
・技術力

・実行力
・理解力
・提案力
・コーチングスキル
・ビジョニングスキル
・チームビルディングスキル
・イノベーションスキル
・部下やチームメンバーとの信頼構築力

選ぶべきはバリューを軸とした『バリューリーダーシップ』

これだけ多くのリーダーシップの理論や概念がある中で、自分がどのスタイルのリーダーシップを発揮すればいいのか? を見つけ出すのは至難の業と言ってもいいかもしれません。

そこで提唱したいのが、『バリューリーダーシップ』です。

リーダーの役割は、組織のメンバーに「この指とまれ!」と方向を示し、共感してもらい、同じ方向を向いて頑張って行く状態をつくることだと考えます。
その方向性を決める際、目標(我々は〇〇を達成する)は2番目にして、バリュー(我々は〇〇を大切して仕事をしよう)を1番に考えるのが『バリューリーダーシップ』です。

現在はVUCAと言われる、時代や環境の変化が激しい状況です。世の中が求めること(マーケットやクライアントのニーズ)が不確実でドンドン変化しており、組織の目標や商品・サービスもそれに合わせてコロコロと変化せざるを得ません。
そうした変化の激しいものを1番に掲げてしまうと、「ごめん、時代に合わせて変更したから改めてこの指とまれ!」と何度も伝え直すことになり、組織のメンバーは「えっまた方向性が変わるのか?」とネガティブな感情を抱きやすくなってしまいます。

バリューリーダーシップは、時代や環境の変化が早く激しい中でも不変的な存在であるバリュー(価値観)を1番に考え、目標や商品・サービスは2番手以降に持っていきます。
リーダーが、「うちは、バリューを何よりも大切にしながら仕事をします!この指とまれ!」とメンバーに示すのです。そしてこれに共感し、体現をしてほしいと明確に打ち出します。

その上で、「〇〇億、〇〇社の新規開拓、〇%のシェア獲得、クライアント満足度〇%」といった目標を2番手として掲げ、「この目標はマーケットやクライアントのニーズによって変更する可能性があるが、バリュー(価値観)は変わらずに求め続けるし、皆で体現し続けよう!」と伝えるのです。

【図】バリューリーダーシップ

バリューリーダーシップを選ぶメリット

このバリューリーダーシップができると、「うちの上司は朝礼暮改が多すぎて困る」といったネガティブ感情を大幅に減らせます。
「軸がブレないリーダーについていきたい」と考える人は多いため、リーダーとしてメンバーを率いる上で一貫性を持つことはかなり重要です。

データ主導の戦略・予測分析を行うインサイツ・アンド・アウトカムズ(Ins & Outs)社の共同創業者であるジョン・クリスチャンセン氏も、「リーダーは一貫性を持つべきである」としています。

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出典:従業員に「辞めたい」と思わせるリーダーの8つの行動|(『Harvard Business Review』|2019.10.16)
https://www.dhbr.net/articles/-/6221
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また、バリューリーダーシップは、テレワークでコミュニケーションが減ってしまう状況でも機能しやすいです。
リーダーが日頃から「私たちのチームはこのバリューを大切にしている」と伝え続け、それが浸透していれば、部下は「テレワークで自宅勤務だから他人の目がないので、ゆっくり時間かけてやってもいいや……」となることがあっても、「違う。この組織は“明日の100点より本日の30点”というバリュー(価値観)があるのだから、スピード感持ってやらないと!」と、自分で自分を律することができます。

バリューリーダーシップは多くの企業で選ばれ始めている

トヨタ自動車の豊田章男社長も、2019年5月に米国バブソン大学の卒業スピーチで、「20年後どんな車が走っているのか予測不可能。その中で、 “トヨタウェイ”という価値観は、トヨタにとって北極星のようなもので、私たちを導く光。目指し続けるもの」と述べています。
バリューリーダーシップと同じ考え方ですね。

また、世界的に見てもバリューで企業経営や人材育成を行なう企業が増えています。

参照:目標によるマネジメントはオワコン! 企業が今、バリュー経営にシフトすべき理由(@人事プライコラム)
https://at-jinji.jp/expertcolumn/219?fbclid=IwAR1fY2FYtustCOXzjBAcrSRZ2JLJpBdevdF4yonXV30f6T7TxPq5BUAEwEA

ただし、企業の方針として「何をやるか?よりも誰とやるか」よりも「誰とやるか?よりも何をやるか?」を重視している企業には、このバリューリーダーシップは合いませんので注意が必要です。何よりも誰、すなわち人を中心としている企業であれば、どんな考えを大切にして仕事をするのかを軸としたバリューリーダーシップはフィットし、機能すると思います。

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