700名調査から判明した令和型マネジメントと、人事が担うべき役割

メンバーに対して「あれ、おかしいな」「もっと、こうすれば良いのに」と思うことは良くあるはずです。しかしながら、些細なことであればあるほど、日常の業務の忙しさから指摘はせずそのままにしてしまった経験は皆さんがお持ちだと思います。「小うるさい上司だ」と思われるのも嫌ですし、「まあ、この程度は……」となってしまう訳です。私たちは、こういった見逃しを、リーダーの「見逃しの罪」と言って許しません。

時代にあったマネジメントを行うことで優秀な人材を育てていくことはどの企業にとっても重要な経営戦略の一つです。しかし現代では、人材難に加えて、マネジメント人材の不足が大きな課題となっています。
人材マッチングサービスを提供する当社にも、企業様から「マネジメント層が育たない」「若手を育成するメンターがいない」などの人材育成にまつわる相談が日々寄せられています。

当社が1月に公開した「管理職に対する意識調査」の結果をもとに、現代において求められているマネジメントスタイルはどのようなものかを紐解いていきましょう。

目次

  1. 令和の理想的なマネジメント像とは
  2. 進む管理職離れ、全世代で浮き彫りに
  3. 良い影響を与える上司との出会いが管理職志向を大きく左右
  4. 女性の約6割が管理職望まず
  5. 避けられがちな管理職、経験者の満足度は高め
  6. 人事の役割を考える
  7. 令和の管理職の役割とは
  8. 参考:調査リリース情報

令和の理想的なマネジメント像とは

700名のビジネスパーソンに、どのようなマネジメントを希望するかを聞いたところ、全世代において「チームの雰囲気を良くすること」が最重視されていることが明らかになりました。「長所を褒めて伸ばす」指導を求める声は、「厳しい指導」を望む声の倍以上に上りました。
また、プライベートでの交流を求める声は最も少なく、ビジネスライクな関係を望む傾向が強い特徴も見受けられます。

理想の働き方を聞いたところ、「オン・オフをはっきりさせ、プライベートを大切にする」が260人で最多となり、次いで「本業の給与をしっかり上げていく」が213人「成果にこだわらず、ストレスフリーでゆるく働き続ける」が172人と続きました。一方、「出世して組織を率いる」という回答は72人にとどまりました。
かつての出世競争や、肩書を重んじる働き方への魅力は多くの人にとって薄れつつあるようです。

さらに、ワークライフバランスを重視しながらも、「本業の給与をしっかり上げていく」(213人)、「投資や副業で会社に依存しない収入を作る」(136人)という収入にまつわる回答も多く見られました。賃金の上がりにくい社会状況の中で、プライベートの時間を確保しながらも、収入をしっかり得たいという傾向が強く出ています。

働き方は多様化し、これまで日本の当たり前であった終身雇用や年功序列がなくなりつつあります。その中で、会社への依存度を下げるキャリア戦略や、多様な収入源を模索する傾向は今後もますます強まっていくでしょう。

進む管理職離れ、全世代で浮き彫りに

管理職になることに否定的な意見をもつ人は約51%で、ビジネスパーソンの管理職離れが改めて明らかになりました。結果に世代による違いはほとんど見られず、まんべんなく分布していることから、どの世代でも管理職を避ける人が多いことが判明しています。

管理職を志向する人のみに、理由を聞くと「収入が上がるから」が最も多い回答となりました。これは「社内で出世したい」「自分の裁量が高まる」よりも多い回答数です。

管理職を望まない人に理由を聞くと「責任が重すぎる」「仕事量が増える」が上位となり、「プライベートの時間が減る」「メンタル面での不安」と続き、管理職の負担の増加をネガティブに捉える人が多いことがわかります。

また、「給与面でのメリットを感じない」という回答が92人にのぼっており、管理職としての責任や負担に見合う待遇が期待できないと感じている人が多くいるようでした。

管理職に対するイメージを聞いた設問では、「憧れ」や「かっこいい」などのポジティブな意見は少数派で、「ストレスが多い」(318人)「仕事が忙しくなる」(263人)などのネガティブな回答が多く見られました。

「部下の育成責任がある」(252人)という回答も多く、特に40代以降では責任感や業務負担への意識が顕著に高まっています。また、「収入が増える」や「社会的な地位が上がる」といった管理職のメリットは一定の支持を得ているものの、ネガティブなイメージの回答が優勢でした。

若い世代では一部に管理職への興味が見られるものの、年齢が上がるにつれて管理職の現実的な負担や責任が強く意識される傾向が明らかになりました。

良い影響を与える上司との出会いが管理職志向を大きく左右

過去に良い上司がいたか、その上司の存在によって管理職になることへの考えがどのように変化したかを尋ねたところ、「非常に良い上司がいた」と感じている層(113人)では、約67%(76人)が管理職を選択肢として考えるか、積極的に目指したいと回答しました。良い上司との出会いが、次世代のマネジメント人材育成のポイントとなる可能性があることがわかります。

一方で「上司との関わりがほとんどなかった」層の約76%が「管理職は絶対に避けたい」と最も否定的な回答を選びました。上司というロールモデルに関わらなかった場合、管理職に対し拒否感を感じる傾向もあるようです。

良い影響を与えた上司・指導者の属性を聞いたところ、新卒生え抜きの人物の割合は約21%に過ぎず、半数以上が自社外を経験した人の存在を挙げています。顧問や業務委託パートナーなどの社外人材を挙げる人も98人と一定数いることから、多様な経歴を持つ上司から良い影響を受けている実態が明らかになりました。

また、「いない」と答えた人が約28%と圧倒的最多の回答となったことから、良いマネジメントができる人材や、その育成体制の不足を示唆しています。

女性の約6割が管理職望まず

管理職になることについてどう考えているかという質問では、大きな男女差があることがわかりました。女性の約61%が「管理職になりたくない」と回答しており、男性の約37%と比べて明らかに多い回答となりました。

避けられがちな管理職、経験者の満足度は高め

男女問わず管理職150名を対象に「管理職という立場への満足度」について聞くと、「非常に満足している」と「まあ満足している」が全体の約半数を占めました。「どちらともいえない」を含めると、約8割の管理職が一定の納得感や現状維持の意識を持っていることがわかります。

加えて現役の女性管理職で管理職満足度に関して「非常に不満」「やや不満」と答えた人は27%にとどまり、72%はポジティブな評価をしています。
一方で、「非常に不満がある」と「やや不満がある」と答えた人も31人存在し、管理職としての役割や責任に対する負担感が一部で見られました。

人事部門が果たすべき役割を考える

管理職離れが進んでいるといわれていますが、アンケート調査より、実態が明らかになりました。管理職離れは、若い世代に見られる傾向だと誤解しがちですが、実はあらゆる世代の働くビジネスパーソンで見られる傾向です。このような向かい風の中で、人事部門は、組織の管理職を担う人材の採用や育成を実施しなければなりません。アンケート調査から見えてくる、人事部門が果たすべき役割を考えていきましょう。

ロールモデルの提供と接点の創出

一点目は、 ロールモデルの提供と接点の創出です。「良い上司」との出会いが管理職志向に大きな影響を与えるため、社内外のロールモデルとの接点を増やす施策が必要です。例えば、社内での成功事例を共有する場や、メンター制度の導入を通じて、次世代リーダーにポジティブなマネジメント像を示すことが求められます。

管理職の魅力を伝える

二点目として、管理職の魅力を伝える活動も有用でしょう。「管理職=重責と負担」という既存のネガティブなイメージを払拭するため、管理職として得られるやりがいや成長機会を伝える場を設けましょう。例えば、自社の現役の管理職が語るリアルな経験談を共有する場を設けてみる。イメージではなく身近な管理職の実態を知ることで、管理職が魅力的である、選択肢のひとつになりえると実感を持ってもらえる可能性があります。

柔軟なマネジメントスタイルの採用

三点目は、柔軟なマネジメントスタイルの採用です。
今の働き手の多様な価値観に対応するため、キャプテン型のマネジメントスキルを育成する研修プログラムを取り入れること。また、外部のメンターなども活用し、社外からのマネジメントを自社にうまく取り入れることも手です。例えば、チームの雰囲気づくりやメンバー個々の長所を引き出すことは、社外の専門家のほうが長けていることもある。自社内でマネジメントを完結させようとしないことも、次世代マネジメントの新しい方法です。

待遇や環境の改善

そして最後に、待遇や環境の改善も挙げられます。管理職離れの一因である「給与や待遇が見合わない」という課題に対応するため、昇進後のメリットを明確にし、報酬制度やワークライフバランスを見直すことが求められます。収入が上がるなら管理職になりたいと感じる人は一定数いますので、管理職の役割に見合った待遇を明示することで、なり手を増やすことができます。

令和の管理職の役割とは

令和の管理職は、単なる「管理者」ではなく、メンバーを元気にする「キャプテン」としての役割を果たすべき時代に入っています。このようなリーダーを育成するため、人事部門には、働き手の価値観を理解し、適切な育成プログラムや環境整備を提供する責務があります。これにより、組織全体の活性化と持続的成長を支えることが可能になるでしょう。

人事の役割は多岐に渡り、大変なことも増えます。しかし、人事が単なる管理業務に留まらず、社員の育成と働きがいを向上させる「組織のパートナー」として機能できれば、必ず組織は成長します。そして人が成長すれば、企業の競争力も高まります。
人事は、企業の持続可能な成長を支える土台を担う、とても重要なポジションです。やりがいを感じながら、日々励んでいければと思います。

参考:調査リリース情報

調査概要:管理職に関する実態調査
調査方法:インターネット調査(QIQUMOを利用)
調査時期:2024年12月
有効回答:ビジネスパーソン700名
年齢:20代から50代まで、各世代150名ずつ
属性:メンバーマネジメントを伴う管理職150名、それ以外の会社員550名
リリース:https://biz.itpropartners.com/blog/report/2678/

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