チャイルドペナルティ
(ちゃいるどぺなるてぃ)
「チャイルドペナルティ」とは?
チャイルドペナルティ(Child Penalty) とは、出産・育児を機に発生する労働所得の低下を指します。特に、子どもを持つことによって、女性のキャリアが停滞し、賃金が大幅に低下する現象が強く表れます。
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1. チャイルドペナルティの主な特徴
✅ 女性に集中して発生
- 日本では、育児の負担が主に女性に偏っているため、出産後の女性の賃金が大幅に低下します。
- 一方、男性は出産後も労働時間や昇進に大きな影響を受けず、むしろ賃金が上昇するケースも多い。
✅ 労働時間の減少が昇進機会を制限
- 出産直後は、育児休業や時短勤務の影響で女性の労働時間が減少。
- しかし、その後フルタイムに戻っても、一度生じた賃金格差は埋まりにくい。
✅ 役職手当の差が賃金格差の主因になる
- 出産直後の賃金格差の主因は「残業手当・時短控除」。
- しかし、15年以上経過すると、「役職手当」の差が賃金格差の主因 となる。
- つまり、育児期の労働時間減少が、昇進機会を失わせ、結果的に長期的な賃金格差につながる。
✅ 国際的にも日本のチャイルドペナルティは大きい
- 日本では、出産後10年で女性の賃金が平均44%低下 すると報告されている(世界的に見ても大きな水準)。
- 企業の評価制度や働き方の問題が、ペナルティの長期化を助長している。
2. チャイルドペナルティの要因
チャイルドペナルティが生じる要因は、以下のように整理できます。
要因 | 影響 |
---|---|
育児休業・時短勤務 | 労働時間が減少し、給与が減る |
長時間労働が評価基準 | 残業が昇進の要件となり、不利に |
復帰後のキャリア形成の遅れ | 育休取得者の昇進スピードが遅くなる |
固定的な性別役割分担 | 女性が家事・育児を担う割合が高い |
役職手当の取得機会の差 | 昇進機会の喪失が長期的な賃金格差を生む |
特に、「長時間労働が評価される風土」「時短勤務者の昇進機会が少ない」ことが、ペナルティを固定化する要因となっています。
3. チャイルドペナルティを解消するための施策
✅ 1. 成果ベースの評価制度の導入
- 労働時間ではなく、成果やスキルを評価基準にすることで、時短勤務者や育児中の社員も昇進しやすくなる。
例: 「プロジェクト貢献度」「スキルアップの達成度」 を昇進要件に。
✅ 2. 柔軟な働き方の推進
- フレックスタイム、リモートワークなど、多様な働き方を認める。
- 短時間勤務でも昇進可能なキャリアパスを設計する。
✅ 3. 企業文化・マネジメントの変革
- 管理職の意識改革を促し、「残業=評価」の風土を見直す。
例: 社内でロールモデルを作る(時短勤務管理職の登用)。
✅ 4. パートナーの育児参加を促進
- 育児を夫婦で分担しやすい環境を整える(男性の育休取得促進)。
例: 「育児休業取得率を人事評価に反映する」 などの施策。
4. 企業の対応が成長につながる
チャイルドペナルティを解消することで、企業には以下のメリットがあります。
- 優秀な人材の離職を防ぐ → 長期的な競争力向上
- 多様な人材が活躍することで、イノベーション創出
- ダイバーシティ経営の実現 → 社会的評価の向上
特に中小企業では、短時間勤務でも生産性を最大化できる評価制度 を取り入れることで、少人数でも効率的な経営が可能になります。
5. まとめ
- チャイルドペナルティは、女性の賃金低下と昇進機会の制限を引き起こす現象。特に日本では10年で賃金が44%低下※
- 原因は、長時間労働を前提とした評価制度と、育児期の労働時間減少による昇進機会の喪失。
- 企業は、成果ベースの評価、柔軟な働き方の導入、管理職の意識改革などを進めることで、ペナルティを解消できる。
- チャイルドペナルティを解消することは、企業の成長と人材活用の最適化につながる。
企業の持続的成長のために、「長時間労働が前提」の評価制度から脱却し、多様な働き方を支える仕組みを整えることが求められます。
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※:[プレスリリース] 企業内の昇進システムが生む『子育てペナルティ』 ――人事データから明らかになった男女間賃金格差の原因―――経済学研究科・経済学部