外国人材のキャリア形成論【前編】

外国人材が長期的なキャリアを形成する意義と影響

BEENOS HR Link株式会社代表取締役社長の岡﨑 陽介が特定技能制度の成り立ちから課題点、これからの展望などを実際の例を交えながら紹介する本連載。前回は外国人材雇用の増加によるグローバル化や生産性向上、日本人と外国人の労働意識の差などについて紹介しました。今回は外国人材のキャリア形成とそのための支援などについて解説します。

前回:特定技能外国人採用の流れとよくある課題点
連載記事:https://at-jinji.jp/expert/column/104

目次

  1. 日本での長期雇用を目指すため~「特定技能2号への転換の必要性」
  2. 外国人材がキャリア形成の道筋を見つけるために必要な支援とは
  3. 特定技能2号への転換と長期的な定住や永住者としての将来の可能性
  4. 日本社会・企業が受け入れるべき変化と、国際化の進む労働市場における競争力向上

日本での長期雇用を目指すため~「特定技能2号への転換の必要性」

外国人材が日本で働く目的はさまざまです。規定の期間が満了したら帰国することを望む方もいれば、安定した就労環境や、母国よりも高い賃金などを求めて日本でのより長期での就労を望む人も多くいます。

日本政府の方針は特定技能によって一時的な人材不足の解消ではなく、長期間の人材獲得を目指しており、特定技能1号での就労を入り口として、滞在期限のない就労が可能な特定技能2号への転換の道筋を用意することで長期での安定した人材獲得が期待されています。

出所:「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」出入国在留管理庁

特定技能1号の在留期限は5年間と上限が決まっており、その期間を超えての就労を望む場合は特定技能2号への転換が必要になります。特定技能2号を取得するには、業種ごとの所管省庁が定める試験に合格する必要があり、業種によっては一定の日本語検定も求められます。

特定技能2号では3年、1年または6カ月ごとの更新を行えば、無期限で日本に滞在し続けることが可能で、永住許可の条件である在留期間に算入もされます。1号においては一定の実務知識とオペレーション能力が求められますが、特定技能2号では長期の実務経験に加え、より高度なスキルとして部下などのマネジメントができるようになることが要件になっています。例えば外食業においては後輩の教育や、シフト管理などの店長が担当する業務領域での経験が必要になります。

マネジメントスキルの形成においては日本人従業員とのコミュニケーションが特定技能1号の業務と比較して増加するため、試験の有無にかかわらず日本語能力が必要になることから業務経験とは別に言語能力も重要なポイントです。

外国人材がキャリア形成の道筋を見つけるために必要な支援とは

特定技能2号への転換といったキャリア形成の道筋を作っていくためには、受け入れ企業において、そもそも長期での雇用が念頭にあるかも重要になってきます。

受け入れ企業によっては5年以上での長期雇用ではなく、業務によっては短期での労働力として外国人材を採用する場合もあり、企業の受け入れの姿勢はさまざまです。

外国人材においても、必ずしも一つの会社で長期的にスキルを学びたいと思っている方ばかりではなく、特定技能1号の滞在上限年数5年で帰国することや、短期でより条件の良い企業への転職を繰り返す例もあります。企業側の採用意向と外国人材側の就労意識をマッチさせた形での就労が望ましいと考えられます。

そして長期での就労のキャリアを外国人材が選んだ際には特定技能2号に定められる資格試験への合格が必須事項となっており、外国人材は試験をパスするための知識を勉強する時間が必要です。また特定技能2号において求められるスキルとしてマネジメント経験が挙げられますが、受け入れ企業は特定技能2号への転換を望む外国人材に現場でのマネジメント業務を積極的に担当させることが必要になってきます。

外国人材が望むキャリアの形を受け入れ企業と外国人材がすり合わせ、就労期間や働き方を双方が納得したうえで、必要であれば次のステップへと進むことが出来る環境を整備することが重要です。

特定技能2号への転換と長期的な定住や永住者としての将来の可能性

特定技能2号への転換は、外国人材にとって日本での生活をより安定させる大きな一歩です。特定技能1号では在留期間が通算5年間に制限されており、家族帯同も原則認められていません。しかし、特定技能2号に移行することで、在留期間に上限がなくなり、更新を繰り返すことで長期的な就労が可能になります。

また、特定技能2号では配偶者や扶養する子どもの帯同が認められるため、家族とともに日本での生活を築くことができます。これにより、単身赴任の不安が解消され、家庭を持つ労働者が日本社会により深く根付く環境が整います。

さらに、特定技能2号が求める技能は「熟練した技能」とされており、特定技能1号よりも高度なスキルを持つことで職場での評価が向上し、より良い待遇やキャリアアップの機会も期待できます。

出所:「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」出入国在留管理庁

こうした環境の変化は、外国人材が単なる有期雇用者としてではなく、日本社会に定着する可能性を広げます。特定技能2号での在留期間は永住権申請の対象期間としてもカウントされるため、一定の条件を満たせば永住者となる道も開かれます。永住者となれば、日本での生活や就労の自由度が格段に向上し、雇用契約や在留資格更新の制約がなくなります。また、子どもが日本の学校で教育を受け、日本社会で成長することで、家族全体が地域社会に溶け込むことも期待されます。

特定技能2号への転換は、日本での生活基盤を築き、長期的には永住者として地域の一員となる可能性を秘めています。労働者個人の安定した未来だけでなく、地域や企業にとっても重要な人材となり、日本社会の多様性や活力を支える存在として、新たな未来を切り開くことでしょう。

日本社会・企業が受け入れるべき変化と、国際化の進む労働市場における競争力向上

特定技能制度をはじめとする外国人材の受け入れは、日本社会や企業に大きな変化を求めています。少子高齢化が進行し、人手不足が深刻化する中で、外国人材は日本経済の重要な担い手としてますます期待されています。
特定技能制度はその一環として、即戦力となる外国人材の受け入れを可能にしました。特定技能1号や2号で活躍する労働者は、農業、介護、建設業など多様な分野で貴重な労働力を提供し、日本産業を支える重要な存在となっています。


出所:「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」出入国在留管理庁

同時に、外国人材を受け入れる企業や地域には、彼らが長期的に働きやすい環境を整えることが求められます。言語や文化の違いに配慮した研修の実施や、家族で暮らしやすい生活基盤の整備が、外国人材の定着において鍵を握ります。

また、国際化が進む労働市場では、各国で高度な技能を持つ労働者を巡る競争が激化しています。こうした中で、日本が魅力的な就労先として選ばれるためには、制度の透明性や就労環境の改善が不可欠です。

特定技能制度の活用を通じて、日本社会がこれらの変化に適応し、企業や地域が国際競争力を高めることで、外国人材がより活躍できる場が広がっていくことが期待されます。
後編では、特定技能2号取得に向けた、企業の取り組み事例についてご紹介します。

>>>外国人材のキャリア形成論【後編】外国人材のキャリア展望 につづく

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