新入社員研修は、入社したばかりの社員にとって、会社の印象を決定づける大きなイベントです。先輩社員がどのように振る舞っているかを、新入社員はしっかりチェックしています。また研修の運営方法は、カリキュラムの定着度にも影響します。適切な運営によって、新入社員研修の効果を高めましょう。
このページでは、新入社員研修の運営について、よくある質問と答えをまとめて解説します。
目次
スーツやビジネスカジュアルで行うことが一般的です。ただし、身だしなみ研修など、カリキュラムの内容上、スーツで行う必要がある場合には、その旨を開催案内に記載しておきましょう。
なお実地研修は、作業着や汚れてもいい服装、動きやすい服装で行う必要があります。この場合も、研修内容を開催案内に明記し、服装を指定しましょう。
会場設営は受講者の満足度・定着度に直結します。たとえば、「ホワイトボードやスライドが見えづらい」「講師の声が聞こえづらい」「室温が適切でない」などの問題があると、受講者の集中力をそいでしまいます。以下の点に注意しましょう。
教室型配置の場合は、縦横をきちんとそろえ、第一印象をよくしましょう。グループ型配置の場合は丸テーブルが理想的です。グループメンバーが視線を合わせやすく、一体感を作りやすくなります。なお、机と椅子は同系統のものを使うときれいに見えます。
机や椅子の配置は、受講者側からはもちろん、講演者側からもチェックしましょう。会場後方から配置を確認する場合には、実際に席に座って確認することが必要です。また、会場前方に立ち、講師が参加者と目を合わせやすいか、スクリーンを操作しやすいかなどを確認しましょう。
スクリーンは、図1のように、正面に設置されることが一般的です。
ただし、この配置だと、研修の主役がスクリーンになり、スライドの内容を見る・読むだけの受動的な研修になってしまう恐れがあります。また演台があることで、受講者と講師の間に距離が生まれてしまいます。
理想的なのは、図2のような配置です。
この配置では、講師が主役となって研修を進めることが可能です。講師の前に演台がないため、講師が自由に移動でき、受講者との距離を縮めることもできます。なおこの配置にする場合は、PCをリモートコントロールしてスライドを操作できるツールが必要になります。
ホワイトボードは真っ白になるまできれいにしておきましょう。後方からの見やすさに直結します。同じ理由で、マーカーは太字のものを準備し、きちんと書けるかどうかチェックしておきましょう。
A4の白紙、大小1種類ずつの付箋、模造紙などは、もしものときに準備しておくとよい備品です。そのほか、後方に予備のテーブルを1台置き、参考図書の置き場を作るのもおすすめです。
資料などの配布物は、列ごと、グループごとにまとめ、配布する順に並べておくのがおすすめです。なお、1日の中で複数の講師が研修を行う場合は、資料配布の順番やタイミングなどを事前にシミュレーションしながら準備しましょう。
講師には、事前に要望することを明確に伝えておくことが重要です。互いの期待や推測だけで研修を行うと、「予想と違った」ということになるリスクがあります。研修の内容や方向性と併せて、全体のスケジュールも共有しておくと、内容をうまく調整してもらえるでしょう。
社内講師に依頼する場合には、講師の質に差があると、研修の効果に影響が出てしまいます。講師の手引きやマニュアルを作成し、リハーサルを義務化するなどして対処しましょう。
当日は、「スライドがうまく表示されない」などの不備がないかをチェックする必要があります。また、おしぼりや水差しなどの配慮もあると理想的です。特におしぼりは、汗拭き用と、チョークやペンなどで汚れた手を拭く用の2枚を用意し、休憩時間には取り換えるとよいでしょう。
1日で複数の講師が研修を行う際には、講師が入れ替わる際に効率よく動くことが重要です。講師を案内する係、資料を配布する係、ホワイトボードを整理する係などの役割分担を決め、それぞれがいつどのように動くかをシミュレーションしておきましょう。
なお、社外講師の場合、講師を案内する係を新入社員にやらせるというユニークな方法も効果的です。新入社員と講師の距離が近づき、受講者が積極的になるメリットがあります。
新入社員研修のグループ分けでは、以下の点に配慮しましょう。
研修のカリキュラムにもよりますが、一般的には4~5名のグループが適切です。人数が少ないと、ディスカッションで意見に偏りが出てきますし、多すぎると発言できない人が出てきてしまいます。
多様な視点からの意見が出せるよう、職種や部署、出身、性別など、属性の違う人をグループにするのが理想的です。
1時間~1時間半ごとに、20分は確保しましょう。疲労と眠気を取り、受講者の集中力を保つために、休憩は欠かせません。休憩時間は、運営側が受講者に本音の感想を聞ける機会にもなります。
新入社員研修への受講姿勢を積極的にさせるには、以下の方法が効果的です。
受講者の実情を把握し、受講者に共有することで、研修内容を自分自身の課題として認識できるようになります。
たとえば、座学の形式に比べ、グループワーク形式は受講者が主体的に取り組めるメリットがあります。詳しくは「もっとも身に付く方法はどれ? 新入社員研修の実施形式まとめ」を参考にしてください。
「私も新入社員時代はこのような失敗をよくしていました」そんな失敗談を語る講師が、どのようにして経験と実績を積んだかを語ることで、受講者は研修に感情移入できるようになります。「自分もやってやるぞ」というモチベーションを高められるでしょう。
受講生に研修の役割を与えることで、「自分たちの研修だ」という意識が高まります。点呼係、事務局との連絡係、資料配布係、日誌作成係など、各係で新入社員5~6人くらいの構成が理想です。
新入社員研修のフォローアップは、以下のように行いましょう。
すべての受講者に、しっかりと記入されたアンケートを提出してもらうため、必ず研修中に記入の時間を取ります。感想や意見は、以後のフォローアップ研修に生かしましょう。率直な感想を集めるには、無記名アンケートがおすすめです。
研修で学んだことと今後の目標、実行計画を記入させることで、学習内容の定着を図ります。報告書は作成させっぱなしではなく、研修運営担当者や上司からフィードバックすることも重要です。
主に知識面での定着度を向上させるために行います。研修が終わってから数日以内には実施しましょう。
配属先の上司は、新入社員が研修で学んだことを実務でアウトプットできるよう配慮する必要があります。人事担当者は各上司に研修内容を共有するようにしましょう。
新入社員研修の内容を確認するとともに、フォローアップ研修までの行動を振り返り、実践を継続するための具体的施策を検討します。
新たに研修の場を設けることはせず、OJTやフォローアップ研修で新入社員研修の内容を補うことが多くなっています。ただし、研修で用いた資料を配布するなど、最低限の配慮は必要です。また、十分なフォローができるよう、人事担当者は欠席した新入社員や配属先の上司に、研修内容を共有するようにしましょう。
企業によっては、入社してから早いうちに現場の厳しさを知ってもらうため、新入社員研修を厳しく行うこともあります。
ただし、その厳しさは、精神論に陥らず、定量的・客観的な評価ができるものに限る必要があります。たとえば、ビジネスライティングの研修において、「誤字・脱字がないか」「語彙や表現はひな型に沿っているか」などの指標を設け、その指標に達しなければ何度もやり直しをさせる、という厳しさは合理的です。一方、「お辞儀に気持ちがこもっていない」「挨拶に気合いが足りない」といった厳しさは、評価者の主観によってどのようにも解釈が可能であるため、無限にエスカレートする危険性があります。場合によってはパワハラになる可能性もあるため、十分な注意が必要です。
【参考】
眞崎大輔監修、トーマツイノベーション編著『人材育成ハンドブック いま知っておくべき100のテーマ』(ダイヤモンド社、2017年)
坂川山輝夫『新入社員研修に成功する100のツボ』(太陽出版、2006年)
間杉俊彦『若手をつぶす?“スパルタ式”新入社員研修「厳しさ」と「理不尽さ」の曖昧な境界線』(ダイヤモンド・オンライン、2010年6月7日)
※こちらのページに掲載している情報は2017年12⽉時点のものです。
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