失業経験アリ人事コンサルによる直球コラム
仕事の能率が悪く、時間外労働ばかり多くなっている社員への対処法
2016.08.08
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普段仕事をこなしているときや、プロジェクトを複数メンバーで行っているときにありがちなのが、能率の悪い社員の存在です。この手の社員は、他の社員に迷惑をかけるだけではありません。時間外労働手当対象社員の場合は時間外労働、いわゆる残業が多くなり、なぜか能率が良く仕事量が同じか多い社員よりも給与+手当が多くなり、賃金総額が高くなるという逆転現象が起こってしまいます。
その結果、人件費を圧迫することになり、蓄積すると企業経営に少なからずダメージを与えていく要因になるだけでなく、能率の良い優秀社員から「なぜあの人は自分より仕事ができないのに、自分より給料が高いのだろうか…」と思われてしまいます。結果、会社全体のモチベーションが低下し、最悪の場合、転職という形で優秀な社員が他社に流出してしまうかもしれません。
そういった事態を防ぐためには、早急に対応する必要があります。経験不足の新卒社員などは、研修後、独り立ちしてしばらくの間は当然能率が悪いのですから、これらには目をつぶりましょう。「十分な教育を行っても、会社の標準的な能力育成プログラムの下にいる社員」のみに対応する制度を作る必要があります。
ただし、制度形成の時によくありがちな間違いは、就業規則や36協定の改定を行って、残業時間の総量規制を行うことです。総量規制はたしかに人件費の抑制には効果的ですが、全員の賃金を同額にするだけであり、能率の良し悪しを区別する基準にはならないため、効率の悪さを改善することにはなりません。したがって必要かつ大切なことは、能率の悪い社員をどう能率的社員に変身させるかという点と、それでも改善しない場合に賃金総額の減額を図れるかという点に尽きます。以下、3つのステップで考えてみましょう。
ステップ1「能率が悪い部分を指摘して改善させる」
能率の悪い社員を指導する際に、どこの部分の能率が悪いのか、時間で計るものさしが必要です。ただし「Aくんはこれを~分でおこなっているぞ」と言って終わりでは教育効果はありませんし、かえって卑屈にさせるだけです。「◯◯の部分は~のように行えばもう少し早く作業できる」と日々指導し続けることが肝要です。業務効率改善を指導して、会社の方針として浸透させたのちに、はじめて「時間外労働の削減」を業務命令として命じることができるようになるでしょう。
ステップ2「標準作業時間を明確にする」
次のステップは、全ての作業に対して標準作業時間を明確にすることです。例を挙げると、車のディーラーの修理部門では、「エンジンの交換は3時間20分で作業」と明確に時間が掲げられています。それより早く正確に作業できる場合は能率が良いと判断され、それよりも遅い場合は能率が悪いと判断されます。そこまで明確に標準作業時間をさだめることができない場合は、業務を命じる際に締め切り時間をその都度定めることです。すなわち「◯◯の仕事は来週月曜日の8時までに提出するように」と命じることで、能率の悪くムダな労働時間が発生しがちな社員に、時間管理が大切なことを強く認識させる。これを続けることが大切なのです。
時間外労働は法的にも会社・上司からの命令制ですので、無許可時間外労働が常態化している場合は、命令なき時間外労働を禁止してはじめて、無駄な時間外労働を抑制することに着手できるのです。
ステップ3「それでも効率化しない場合は、賞与・賃金をカットする」
ステップ1と2の段階を経ても能率が改善しない社員に対しては、最終手段である人件費の総量カットを断行しなければならなくなります。まずはカットしやすい賞与について、「能率が悪い」ことを理由に、標準的な社員よりも余計に支払った時間外労働手当分の金額を賞与から金額カットすることが必要でしょう。むろん支給総額からマイナスにするのではなく、そもそもの査定を下げて最終金額を調整するのが良いです。
また、賞与が大幅減額になってしまう場合は、昇給・降給査定で調整することになります。基本賃金を下げることで「時間外労働手当の単価を下げる」ことも躊躇してはいけません。もちろん、賞与や賃金を下げることに対して、「能率が悪く年収ベースで調整した」旨を本人に告知し、いかに無駄な時間外労働が「会社にとって必要ない」ことを伝えなければなりません。
いかがでしたでしょうか。だらだらと会社に残ることを良しとせず、きっちりメリハリをつけて労働時間管理している企業の方が、最終的に成長すると言われています。大切な時期に有給休暇をとる社員もまたしかり、有給休暇をとったからといって直接的に罰金・減給等を設定することはできませんが、仕事上の意識が低い社員に対しても対処すべきです。その場合はまず賞与からマイナス査定していくことが法的にも一番問題がありません。ただし、有給休暇をいつでもとれるような休暇もとりやすい職場環境作りと同時並行で進めないと、社員の不満がたまることになりますので、そこはうまく調整する必要があります。遅くまで仕事をする社員を慰労することも必要ですが、その「遅さ」が仕事の遅さと同意義になってはいけません。
執筆者紹介
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田中 顕(たなか・けん)(人事コンサルタント) 大学を卒業後、医療系人材派遣会社・広告代理店で人事を担当したのち、密着型人事コンサルティング団体「人事総合研究所」を設立。代表兼主任研究員として、労務相談受付・課題解決に取り組む。得意分野は採用・法務・労務・人事全般の問題解決等、多岐にわたる。
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