優秀なエンジニアを採用したいなら実施すべき! 採用活動を成功させるPDCA

paiza株式会社の谷口です。前回の記事では、エンジニアの面接で話すべき内容や、面接の進め方などについて解説しました。今回は、エンジニアの採用活動を成功に導くPDCAについてお話しします。

今までの記事でご説明してきた通り、優秀なエンジニアを採用するのは決して簡単ではありません。求人票を作るときは「応募者が知りたいポイント」を押さえておかなければなりませんし、面接で応募者の心をつかめなければ途中で辞退されてしまいます。初めての求人募集でいきなり優秀なエンジニアを採用するのは非常に難しいため、一連の採用活動を通してPDCAを回しながら改善していくとよいでしょう。
今回の記事では成果につながるPDCAを実施するうえで、具体的にどんな点に留意すれば良いのかを詳しく解説します。

【前回記事】優秀なエンジニアが応募してきたら何を話す? 選考途中で辞退されないための面接手順

目次

  1. PLAN:エンジニア採用状況の整理と可視化か
    【開発部の現状把握】
    【採用ニーズの明確化】
    【募集ポジションとペルソナの検討】
    【採用計画(期間・人数など)】
  2. DO:採用活動
    【求人票の作成・公開】
    【スカウトサービスの利用】
    【カジュアル面談の実施】
  3. CHECK:採用活動の振り返り
    【応募者の層について】
    【スカウトの反応率】
    【選考通過率と辞退率】
  4. ACTION:改善
    【求人票の訴求ポイントを再検討する】
    【応募条件の見直し】
    【スカウト運用の見直し】
  5. まとめ:採用活動を成功させるPDCA

1.PLAN:エンジニア採用状況の整理と可視化

【開発部の現状把握】

採用活動というと「まずは求人票作り」と思っている方も多いかもしれませんが、これらを明らかにしておかないと、的確な求人票を作ることはできません。
最初にすべきこと、そして一番大事なことは、開発チームの現状把握です。

paizaで採用活動のご相談を受けているときに、開発チームの現状(構成や開発体制など)について聞くと、「よくわからない」という採用担当者の方も少なくありませんが、その状態でよいエンジニアを採用するのはほぼ不可能です。まずはとにかく現状把握から始めましょう。
以前こちらの記事でもご説明した通り、事業における開発部門の役割や、エンジニアのチーム構成表について、社内のエンジニアに聞きながら埋めていけば開発チームの現状が見えてくるはずです。

参考:エンジニア採用を成功させるには? 絶対にやっておきたい求人票作成前の下準備
https://at-jinji.jp/expertcolumn/312

【採用ニーズの明確化】

現状が把握できたら、次は採用ニーズを明確にしましょう。
「エンジニアを採用したい」ということは、今の開発チームだけでは解決できない何らかの課題が発生しているはずです。
先にご紹介した記事でも触れていますが、採用の発生要因はほとんどが以下の3つに当てはまりますから、ここから掘り下げていきましょう。(複数要因が同時に発生するケースもあります)

  • 欠員の補充(≒退職者の穴を埋められる人がほしい)
  • 新規事業の開始(≒新規事業を始めるのでその仕事をしてくれる人がほしい)
  • 今の事業の拡大(≒すでにある事業の規模を拡大するので人を増やしたい)

【募集ポジションとペルソナの検討】

課題が把握できたら、そこから具体的に「どんなポジションで、どんな業務をしてくれる、どんな人がほしいのか」を明らかにしていきましょう。

例えば、サーバサイドエンジニアに欠員が出たから同様の開発経験がある人がほしい、スマホアプリを作る新規プロジェクトが立ち上がるからアプリ開発に強い人がほしいといったことです。
ここに来てようやく、求人票に記載すべきこと(≒求職者に伝えたいこと)を考える下地作りにとりかかります。

【採用計画(期間・人数など)】

求人票もできていないのに「あと1カ月でエンジニアを5人採用したい」といった計画はほぼ不可能です。現実的に考えていきましょう。

例えば「来年から新規プロジェクトを始める予定だから、キャッチアップの期間も考えるといつ頃までに採用したい」「エンジニアを何人か採用したいけど、受け入れ側のフォロー体制を考えるとまずは優先度の高いポジションを1人ずつ採用して、落ち着いたら若手の採用を進めていく」などといったマイルストーンに落とし込んで考えてみると、「逆算していつまでに何をする必要がある」ということが見えてくるはずです。

2.DO:採用活動

【求人票の作成・公開】

PLANで明らかにした内容を求人票に落とし込んでいきましょう。
PLANの工程を飛ばしてしまうと、「どんな開発チームで、どんな仕事があって、どんな人に来てほしいか」が不明瞭なまま求人票を作ることになってしまいますので、必ず実施してください。

また、新規事業の立ち上げで採用を始める企業では、まだオープンにできない情報や未確定な項目があるケースをよく見かけます。もちろんある程度は仕方ないのですが、「この情報はまだオープンにできなくて、この項目はまだ何も決まっていません」という求人にわざわざ応募する応募者はいないでしょう。
このような場合は、「オープンにできないから仕方ない」でスルーするのではなく、情報はどこまでならオープンにできるのか、決まってない部分は「一緒に決めていきましょう」という書き方などにしておくとよいでしょう。

【スカウトサービスの利用】

求人票を公開すればそれだけで応募が来るわけではありません。
相当な数の求人票が公開されている中で、応募者たちは貴社の求人票どころか会社の存在すら知りません。
求人票の存在を知ってもらうためには、応募者個人へ直接アピールできるスカウトメッセージが有効です。

最近ではほとんどの転職サービスが、企業側から応募者個人に対してスカウトメールが送れるサービスを実施しているかと思います。待っているだけでは応募は来ません。まずは応募者に企業と求人票の存在を知ってもらうためのスカウトを送りましょう。

参考:エンジニア採用を成功に導く「スカウト」と「リファラル」活用のコツを解説
https://at-jinji.jp/expertcolumn/322

【カジュアル面談の実施】

応募が来たらいよいよ面接を実施するわけですが、エンジニア採用を担当されているみなさんは、面接をどんな場だと思っていますか?

面接とは、採用する側が一方的に応募者を選ぶ場ではありません。特に超売り手市場が続いているIT業界では、むしろその逆で「優秀なエンジニアに自社を紹介し、興味を持ってもらい、選んでもらう場」であると言っても過言ではありません。
この意識が抜けていると、まず優秀なエンジニアを採用することはできません。

カジュアル面談や一次面接など、最初の選考では
応募者に自社への興味を持ってもらう
採用したい応募者に、とりあえずでも「次の選考に進んでみるか」と思ってもらう
不採用の応募者にも「悪くない企業だったな」と思ってもらう

を第一の目標にしましょう。

3.CHECK:採用活動の振り返り

全体を通してのCHECKは、早すぎると事例が少なすぎて適切に振り返れない場合があります。期間なら2カ月程度、人数なら3・4人の面接を実施できたくらいを目安として振り返ってみるとよいでしょう。

【応募者の層について】

・応募はありましたか?
・応募があった場合、採用ニーズにマッチする人からの応募でしたか?

【スカウトの反応率】

・スカウトメッセージは送っていましたか?
・送っていた場合、反応(求人票へのブックマーク、応募など)はありましたか?

【選考通過率と辞退率】

・カジュアル面談や一次面接のあと何人が次の選考に進み、何人が途中辞退していますか?

4.ACTION:改善

【求人票の訴求ポイントを再検討する】

もしこの段階で応募が来ていないのであれば、求人票の内容を見直しましょう。もしかしたら、PLANの段階で明らかにしておくべきことができていない可能性もあります。

また、応募がない求人票に多いのが「ポジション名と職務内容と訴求ポイントがずれている」ケースです。
例えば、職務内容が複数の技術分野の業務をこなすフルスタックエンジニア寄りなのに「ひとつの技術を極められます!」という書き方になっている、「チームリーダーを募集します!」という求人なのに業務内容はCTO(最高技術責任者)レベルになっているといった求人票は内容がずれています。

ほかにも、給与幅が「300万円~900万円」などと広すぎたり、職務内容にリーダーの仕事から若手の仕事まで全部書いてあったり、逆に「ご経験に合わせた業務をお願いします」程度しか書いてなかったり…といった求人票も、「何をさせられるのかよくわからない」ため、応募者から敬遠されてしまいます。
CTO、チームリーダー、若手メンバー、フロントエンド、サーバサイド、アプリ開発…というように、募集ポジションによって求人票は分けて作りましょう。エンジニア向けの求人票では、「入社したらどんな環境で何をすることになるのか」が重要です。

【応募条件の見直し】

応募が来ていない・少ない場合に多いのが、「応募条件が厳しすぎて対象者が少ない」パターンです。
絶対に満たしていてほしい条件は何なのか、緩和できるところは何なのかを見直して、落としどころを探しましょう。
もちろん、マッチしない人からの応募が増えても意味がありませんから、応募が来ないからといってやみくもに条件をゆるめる必要はありません。

しかし、例えば「Railsでサービスを作っているからRailsの実務経験が3年以上」「iOSアプリを担当してほしいからSwiftでの開発経験が3年以上」などといった条件を必須にしてしまうと、対象者が少ない上に他社からの需要も高いため、なかなか応募を集めるのが難しいでしょう。

この場合、それなりにWeb開発経験があるエンジニアなら実務経験のない技術もキャッチアップが早いため、例えば「何らかのWebアプリケーションフレームワークを使った実務経験3年以上」といった条件にしたほうがよいかもしれません。
繰り返しになりますが、応募が来ないからといって条件を広げればよいわけではありません。ポジションや業務内容によっては「Railsの知見があることが絶対条件」というケースもあるでしょう。PLANで明確にした採用ニーズにもとづいて条件を検討しましょう。

【スカウト運用の見直し】

スカウトを送っていないのであれば、まずは利用して応募者に自社の存在を知ってもらいましょう。
もしスカウトを送っているのに全然反応がないのであれば

  • 求人の募集内容と送っているターゲット層が合っていないかもしれない
  • メッセージが求人票を見てみようと興味を持ってもらえる文面になっていない

という可能性がありますから、それぞれ見直してみましょう。

まとめ:採用活動を成功させるPDCA

・PLAN:開発部の現状把握と採用ニーズ、採用計画を可視化する
・DO:求人票を作成し、スカウト送信や面接などの採用活動を実施する
・CHECK:応募の有無や応募者層、スカウトの反応率や面接の辞退率・通過率などを振り返る
・ACTION:求人票の訴求ポイントや応募条件、スカウト運用などを見直す


エンジニアを採用して入社に至るまでの採用活動は、すべてひと続きになっています。そのため、こうした振り返りや改善が欠かせません。
上記のようなポイントを押さえた上で、採用活動の確度を上げていっていただければと思います。

なお、ここまでにご紹介した内容を実践して、無事に自社が求めるエンジニアへ内定が出せたとしても、まだまだ安心はできません。なぜなら内定=入社ではないからです。
この連載でもこれまでに書いていますが、優秀なエンジニアであれば、引く手あまたであり、複数企業から内定を得ている可能性が高いです。優秀なエンジニアに入社してもらうためには、内定を出した他社との競争にも勝つ必要があります。そのため、内定後にどのような対応をするかも非常に重要になってきます。

そこで次回は、エンジニアに内定を出したあと、入社までに必要な対応についてご紹介します。

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