人事がおさえておくべき適性検査の活用方法と選び方(2)適性検査の活用とそのトレンド

新卒採用や中途採用で利用してきた適性検査の情報を、採用だけではなく配置配属や育成など、幅広いシーンで活用することが増えています。個人の価値観の多様化や企業を取り巻く環境変化を背景に、パフォーマンスやエンゲージメントを最大化することへの関心が高まっているようです。これは、個人の特性を生かすという視点が広がってきたことが影響していると考えられます。
この連載では、第1回目で「適性検査の基本」情報をおさえ、第2回目で「適性検査の活用とそのトレンド」、第3回目で「適性検査を選ぶときのポイント」について触れていきます。「自社に適性検査は関係ない」と思っている方にとっても、興味をもつきっかけになれば幸いです。

第1回:人事がおさえておくべき適性検査の活用方法と選び方(1)適性検査の基本

目次

  1. はじめに
  2. 活用1)採用
  3. 活用2)社内選抜・人材育成
  4. 活用3)HRデータ活用
  5. まとめ

はじめに

第1回では適性検査の種類や特徴、メリット・デメリットについてご紹介しました。第2回となる今回は、適性検査のさまざまな場面での活用方法を紹介するとともに、近年の環境変化・技術の進化を背景として注目されている活用方法のトレンドについてもご紹介します。

適性検査の主な活用方法としては、「採用」「社内選抜・人材育成」「HRデータ活用」があります。領域が重複する部分もありますが、今回はこの3つの活用についてご紹介します。

活用1)採用

適性検査の利用場面として最も多いのは採用です。適性検査を用いて、エントリーシート・面接では見極めづらい部分や、短時間の会話では掘り下げにくい部分を把握し、深い人物理解に基づいて採用可否を決定する、というのがスタンダードな使い方です。

また、応募者が多く、全員を面接できない場合は、適性検査の結果を用いて面接の選考に進める優先順位をつけるという使い方もあります。
しかし、そもそも自社でどのような人材を採りたいか、適性検査のどの部分を見て優先順位をつけるか、が明確でないケースも少なくありません。その場合、自社の従業員に適性検査を受検してもらい、人事評価等と合わせて分析することで、自社で活躍する可能性が高い人材の特徴を抽出するという使い方もよくされています。

近年のトレンド

これらは採用選考場面での活用を意図した使い方ですが、近年はキャリア教育を意図して活用する例が見られます。具体的には、内定者へ適性検査の結果をフィードバックすることで、自社理解だけでなく自己理解を促し、配属希望を含めた自身のキャリアを考えてもらう使い方です。

さらに近年、キャリア教育型のインターンシップの広がりを背景に、インターンシップ参加者の自己理解やキャリア設計を積極的に支援する企業が増えてきています。その目的に資するツールの一つとして、適性検査を用いるケースがあるのです。このような使い方は、適性検査の新しいトレンドであるといえます。

活用2)社内選抜・人材育成

既存従業員向けの適性検査は、これまで昇進・昇格を検討する場面で用いられることが多数でした。「名選手必ずしも名監督ならず」という言葉もありますが、個人として十分な実績があるメンバーでも、マネジャーとして高い実績を出し続けられるとは限りません。その不確実性を低減するために、普段の関わりでは見えにくい面を適性検査で測り、多面的な情報から昇進・昇格を判断するという使い方です。

また、従業員のキャリア教育の一環として使うケースもよくありました。これは、適性検査という客観的な情報を一つの材料としながら、今後どのようなキャリアを描くのかを主体的に考えていくという方法です。かつては年功序列・終身雇用を前提に入社してきた中高年の従業員向けに自律的に考える機会を付与するというケースでの活用が多くありましたが、近年ではさまざまな年代層で活用されているようです。

近年のトレンド

この領域のトレンドは大きく2つの流れがあります。

1つは、管理職候補者の「選抜」ではなく、ポテンシャルをもつ人材の「発掘と育成」に使うことです。近年、管理職になりたくない若者が多いことが取り沙汰されています。一時期、管理職を大幅に減らす組織のフラット化が注目されたこともありましたが、多くの組織においては一定数の管理職は必要であると考えられます。
そのため、管理職への志向がある人材だけでなく、志向はなくとも適性はある人材を適性検査によって早期に発見し、管理職へとモチベートしていくという使い方が注目されています。

もう1つは、従業員の相互理解のために適性検査を使うことです。コロナ禍をきっかけにリモートワークが増え、対面では自然に得られていた人となりを理解する機会が減ってしまいました。オンラインではうまく意図や気持ちを伝えられているかが分からず、気軽に声をかけたりするのが難しいと感じている新入社員に対し、上司や育成担当もどう声をかけたらいいか分からないという場面はよくあるのではないかと思います。このような背景から、上司や育成担当に配属される新入社員の適性検査結果を渡し、事前に人となりを把握してもらうなど、関わる際の参考資料としての使い方が注目されました。

さらに、新入社員と育成担当がお互いの適性検査結果を見ながら会話する相互理解の場を設けたことで、互いの強みや弱み、コミュニケーションで気をつけたいポイントなどがつかめるようになった、という事例もあります。上司や育成担当が新入社員の結果を知るだけでなく、新入社員も上司や育成担当の結果を知ることで、同じフレームで相互理解を深めることができるのです。

活用3)HRデータ活用

採用や昇進・昇格で適性検査を用いた場合、一連の施策が終わった後に振り返りの分析を行うことがよく行われています。採用・昇進した人材が当初の想定通りだったのか、違うとしたらどこに違いがあったのかを分析し、考察を加えることで、次年度の施策に生かすという使い方です。このような分析が比較的簡単にできるのが、定量データである適性検査の強みです。

近年のトレンド

近年のトレンドとしては、定量データである適性検査の強みを生かし、HR上のさまざまな施策に生かすことが注目されています。
人材の配置・配属へのデータ活用は代表的な例です。全社員のデータを取得しておくことで、適性検査のフレームで各部署の特徴を表すことができます。その部署の特性と個人の適性検査の結果を照らし合わせることで、個人と組織の相性を判断する方法が使われています。また、各組織の職務の特性を分析し、個人との適合度を見ていくという方法もあります。

若年層において「配属ガチャ」という言葉が流行っているように、配置・配属には不安をもたれることが多々あります。適性検査を使って配属をシミュレーションすることで、不安を全て払拭することは難しくとも、より納得感があり、実際に成果を出しやすい配属につなげられる可能性があるのです。

まとめ

今回は適性検査の活用やそのトレンドについてご紹介しました。適性検査の活用場面の広がりには、環境変化や技術の進化、それに伴うHRデータの活用の流れが背景にあります。
これまでの採用や選抜・育成は対面で時間をかけて行ってきたものですが、現在ではオンライン環境にも対応しながら効率よく行うことが求められています。

人事の勘やコツで決めていた人事施策も、業務が複雑化する中での判断は難しいです。その一方で、従業員、特に若年層は根拠が曖昧で納得感のない施策には厳しい目を向けてきます。なぜそのような判断をしたのか、客観的なデータも材料にしながら示していくことが求められているのです。
人事や現場マネジャーの人を見る目が大事なのは変わっていませんが、人間の目を補い、人間の判断を支えるものとして、適性検査を含むHRデータをうまく活用していくことも大切です。

適性検査を活用して十分な成果を出すためには、品質の高い適性検査を使用することが必要です。第3回では、適性検査の品質と選び方についてご紹介をいたします。

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